マクラーレン MP4-12C の回で、コピペで紹介した「プロアクティブ・シャシー・コントロール」の事を考えていたんですが、ようやく腑に落ちたので書いてみます。新技術を生むのは大変ですが、生み出された技術を理解するのは、とても簡単です。
車のサスペンションの役割を考えると、
①衝撃の吸収 ②ロールの制御
の2つになりますが、機械的には全く違うことが要求されます。
①衝撃の吸収はタイヤ1輪毎のランダムな制御になります。この役割を追求すれば、なるべく柔らかくその結果長いストロークになります。昔のシトロエンや、昔のプジョーのようなサスペンションですね。盛大にロールします。
②ロールの制御は、左右の差が出来た時にだけ効いて欲しいので、アンチロールバー(左右の差だけに効くスプリング)で左右のタイヤを結ぶことになります。(今まではですが。)
ところが左右の差は、ロールした時だけに起こるわけではありません。どちらかだけが、縁石に乗り上げた時や、どちらかだけが穴に落ちた時にも差が生じます。このような時にもアンチロールバーが効いてしまい、硬いスプリングが働いてしまいます。結果、乗り心地が悪くなります。
左右が別の動きをした時に、それがロールの場合は硬く、それがロール以外の時は柔らかくしたいのです。
「プロアクティブ・シャシー・コントロール」は、左右のダンパーの上部と下部をたすきのように繋いでいる事はわかっています。
ロールの際は、片側の上部と反対側の下部の圧力が両方高くなります。ダンパーピストンが動いている先の側の圧力が高まるからです。この時だけもっと圧力を高くし、どちらか一方の圧力が高まった時は何もしない。というような仕事をしているのでしょう。
おそらく、たすき掛けのオイルラインの圧力がある一定以上になった時だけ、さらに圧力を高めているのではないでしょうか?
昔から、①衝撃の吸収 と ②ロールの制御の仕事を両立させるように、シャシー設計者はいろいろなアイディアを出していました。究極は、F1のアクティブサスです。
アンチロールを左右の動きをチェックするのではなく、左右の車高を変えちゃうものです。
ところがこれにも問題があって、まずパワー。ロールは早くて、次々に起こるので、常に車高を上げ下げしなくてはなりません。しかも素早く。相当のエネルギーが必要です。
F1最初のアクティブサスはロータスですが、真っ向から取り組んで挫折しました。当時の電子制御は、今のに比べるとゴミみたいなものでしたから余計に無理だったのでしょう。
それから反応時間。ロールし始めてから車高を変えていては、間に合わないのです。よって、サーキット毎に事前にプログラムしておいて、何らかの方法で同期を取って使っていました。これがウイリアムズの方法で、一時は主流になりかけました。
でもこれでは、どこを走るか事前には解らない市販車には使えません。
こんな具合で、車高調整方式はこれまでは非現実的だったようです。
今回の「プロアクティブ・シャシー・コントロール」は、あまりエネルギーを必要としなさそうで、ロール剛性が高くて、乗り心地もすごく良いということなので期待できそうです。
アメリカのモンロー社製というのも良いですね。改造キットが市販される可能性がありますからね。
ちなみに、今回ググってたら最新のアクテイブサスという事で、ステレオのBOSE製のシステムが
載ってました。採用の話は聞いたことがないですが、大排気量の高級車なら乗り心地に特化したアクティブサスが使いきれるかもしれませんね。
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