インタビュー

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WEBマガジン B plus で紹介されました

2017年1月31日火曜日

Buell Ulysses 評価 Evaluation


Buell Ulyssesは特徴のはっきりしたBIKEなので、興味があっても購入に二の足を踏む方も多いと思います。
乗ったことが無い方は、その特徴が自分に向いているのかどうか知りたいと思うので書いてみます。

①ハーレーのエンジン                                                                                                        


  ハーレー
左:ローライダー
右:883                                                                                                                                                                                                                                                            私の場合は、ハーレーのローライダーと883に各々2年ずつくらい乗ったことがあり、そのトラクションの掛かり方とエンジンの鼓動が大好きでした。

どっからどのように開けても開け方にリニアな、なおかつ角の無いトラクションが得られます。パッと開ければどっと加速し、じんわり開ければじんわりと加速します。追い越しでシフトダウンは不要です。角が無いと言うのはチェーンが張るショックが無い事で、それらがライディングからストレスを無くしてくれるのが判ってもうハーレー以外には乗れないとさえ思うようになりました。自然に全身から力を抜いてライディングが出来るようになったのでした。
ラバーマウント

両車ともラバーマウントされていて、アイドリング時はエンジンが大げさに震えますが、走行する回転まで上げれば振動は感じられず、柔らかな鼓動のみが感じられます。鼓動を不快感無く楽しめるように作られているんです。

ただし、我慢ならない欠点がバンク角の不足です。特にローライダーは酷く、首都高速のような曲がりのきついコーナーでは流れに乗ったままでは曲がれません。多角形に起こしては向き替え、起こしては向き替え、というライディングを強いられます。883でさえ国産車の普通車よりもバンク角は少ないんです。

②Buellへの期待

自宅の購入後、BIKEを20年間諦めてましたが、その間の空想上の愛車がBuellでした。ハーレーのエンジンを使ってちゃんとバンク角を確保したBIKEという事で。

Buellはその間に生産中止になってしまいましたが、最終型はアルミフレームをガソリンタンクにするなどの先進的設計で雑誌での評価も高かったので、Buellが欲しいという気持ちが変わることはありませんでした。

購入可能な環境になると直ぐにレッドバロンで中古車を探し、そうすると価格と乗車姿勢からUllysis X12Xが良さそうと判りました。私の探した個体はローシートになる前の型で、その分安く、乗り出しで75万円でした。

Buellには、SSのような車種も、コンパクトで250ccの大きさがウリの車種もあるんですが、私はSSのような戦闘的姿勢ではライディングを楽しめませんし(疲れるだけでなく、首が垂直にならないと自分が今どうなっているのが判らない感じになります)、BMW R80 とYAMAHA TDM850 で背の高いBIKEが良く曲がることを知っていたので、立ちごけし易さがあっても曲がる性能とバーターだから良いとして、Ullysisを選んだのです。

③ここまで手強いのか

Ulysses が来ると直ぐに見に行き、跨って見て高さに納得しました。かなり厳しめのつま先立ちでしたが想定内でした(小生は168cm70kg足長めです)。シートも分厚く、乗り心地も作りも最高でした。また、明るい黄色の塗装も気に入りましたし、凝った荷物置きプレートの造りの良さも感心しました。

ところが後日納車後の帰り道で1個目の信号で足を着く直前、恐怖が腹から湧き上がってくるのを感じました。Ullysis は足付きが厳しいだけでなく、ほんの少しの角度で立ちごけが始まるのです。乗って止まろうとすると体がそれを判るんですね。
後でよく見ると、クランク中心は脛の真ん中あたりで重心がむちゃくちゃ高いんです。

負けるものかと買い物に行ったその場で初回の立ちごけ。駐輪場で止めようとしてバタン。F左のウインカーはお釈迦でした。背が高く重心も相当高いので、引き起こすのも大変で、いったんあきらめた後再チャレンジしてようやく立てました。恥ずかしかったので買い物もそこそこにその場を出たんですが、後でよく見ると、ハンドガードを嵌め込む構造になっているハンドルバーエンドが飛んだらしく、左のガードがブラブラしています。ウインカーは諦めざるを得ないが、バーエンドまでとなると修理代が心配になり、探しに戻りました。

結局、バーエンドは見つかりませんでしたが、思い立って割れたウインカーの破片を拾い集めてきました。家に戻ってから瞬間接着剤と電工テープでウインカーを使えるように出来ました。これは立ちごけするといつも同じで、Fウインカーとハンドガード(=バーエンド)で衝撃を吸収しているようで、ハンドルバーやレバーには影響がありませんでした。
ただ、立ちごけの後バーエンドが無い状態で再度立ちごけした時だけレバーが折れました。

その後の1ヶ月で、計4回立ちごけしました。右も左も。駐車の直前と、で出してすぐの方向転換が倒しどころでした。

2度目で右足を下敷きにしてしまい、2日欠勤。「毎日乗らないと慣れないから」と決心してBuellで通勤するように会社に届を出したところ、総務から「そんな危険なBIKEでは通勤は認めない」と言われてしまいました。(笑)

しかし人間は慣れます。1ヶ月を過ぎると急速に恐怖感が無くなり、立ちごけしなくなりました。

あえてコツを言えば、走り出し直後の方向転換はなるべくせず、どうしてもする時は半クラッチを意図的に使う。これは極低速でのエンスト防止です。大排気量2気筒なので、極低速ではパスンとエンストし易いのです。特にエンジンが温まる前は要注意でした。停車時は、お尻をずらして足をべったりつけるようにしていました。安心感が違います。

④陸の王者

立ちごけの恐怖が無くなると、楽しさが判って来ました。

ワインディングでは思ったとおりフルバンクの必要が無いほど曲がりっぱなで向きが換わる。背が高いので見晴らしが違う。シートが分厚く作りが良いので乗り心地が良い。これは過去のBIKEのなかで最良。トルクが太いのでアクセルだけで思いどうりの加速をする。振動もあるがさほど悪影響はない。重心が高いのに極低速でもふらつきは無い。などなど良いことずくめで、大きくて重いけど早くて乗り心地が良いので、こいつは陸の王者だなーと思いました。

ただ、右のフレームが熱くなり、ニーグリップして乗る癖の人は火傷すると思います。私はそうでもないのでアチッと思ったら股を開く程度で済んでいました。

⑤ツーリングで気付いた事

長距離を走ると振動がかなり厳しいことが判ります。特にアクセルを握りっぱなしになる右手に厳しく、長距離の最中では30分で無感覚になります。これは私の側にも問題があるようで、昔からBIKEに乗っていたので白蠟病予備軍らしいのです。普段でもほんの少し右手に痺れがある感じ。Buellに乗っている期間はこれが顕著になって、お札を数えるのも難しいほどになっていました。ですから無感覚までなるのは全員ではないと思います。
ただ、痺れるのは流して心地いい鼓動感を楽しんでいる回転域なので、心は気持ちいんだけど手の痺れは酷いというギャップが辛かったです。

高速道路では140km/h以上でユーラユーラとふらつきます。とても気持ち悪いです。元々の設定がキャスターが立ってトレールが短いワイディング専用機で、その上Ullysisは上半身が立って車高が高く、高速ではF荷重が減るのでそのせいだと思いました。速度を下げれば良いし、ちょこっとFブレーキをかけてF荷重を増やすと一旦は止まるので、まあ気にせずにと納得していました。

こてこての峠道では圧倒的に早いです。普通に走っていても前走者に追いついてしまいます。Ullysis で良かったと思えます。ほんのちょっとのバンクでクッと向きが換わるのでアクセルを開けるタイミングが早くなるんですね。 

ターンパイクの登りのような、開けてグイーンと曲がるところも気持ちいいです。車体のつくりとタイヤが新しいBIKEで、SSクラスのベターと張り付くようなグリップ感があって、安心して全開に出来ます。ブレーキも良く効きます。ABSが無いのが残念に思えるほどです。一部でカックンブレーキだと不評があるようですが、決してそんなことはありません。重いBIKEをものともしない良いブレーキです。
バンク角の余裕は凄くて、結構飛ばし屋だと自負していますが、どこも擦ったことはありませんでした。
今思い出しましたが、タイヤは今どきのロードタイヤに換装していました。Ulysses の標準はスーパーモタード風の物なのでグリップが違うかもしれません。

全開で攻めるような走りをしている時、アクセルが重いのは気になりました。ある程度以上の開度では2段バネになっているようで、握力が必要になるんです。力を抜いてうまく走りたいのに力が入ってしまい、第一手が疲れるので嫌でした。

ちょっと残念だったのはサイドスタンドしか無く、それが弱いという事。下りで良い景色を写真に撮ろうとサイドをかけて止まり、バッグからカメラを出そうとしたんですが、ブレーキを離すとサイドが外れそうで出来なかったんです。

⑥気付かなかったストレス

長距離での手の痺れ以外はほぼ理想的BIKEだと思っていましたが、HONDA NM4 と2台持ちになって気付かなかったストレスが大きかったことが判りました。
狭い道に入っていく気になれないんです。立ちごけが怖く、Uターンの可能性があるところには行けなかったんですね。

NM4に比べると落ち着く速度も高く、どうもBIKEにせかされているようで、気が休まらない感がありました。

鼓動感の気持ちいいエンジンと早い設定の車体は、飛ばしても流しても両方とも快感だと思っていましたが、そう理想的にはいかなかったようです。

⑦理想の1台か

無い物ねだりに近い話かもしれませんが、Ulysses が理想の1台かという話になると、そうでは無かった気がします。
まずは手の痺れ、それに立ちごけのあまりの手強さと、高速をせかす性格がどうも我慢できませんでした。

ただ、1年くらい試してみるとしたらこれはお勧めできます。こんなすんごいBIKEが世の中にあったのかという気になれると思います。
それとワインディングのためには大概の事は目をつぶれるという人にも。

複数のBIKEが持てる人にはどうかなー。ワイディング専用機がSSのような尖った外観をしていないので納得できないかも。

⑧ここが直せたら・・・。

手の痺れはハンドルをラバーマウントすれば治せたかも。勿論ハンドルステー取付部に仕込むので、トップブリッジを機械加工しなければなりません。HONDAのトランザルプはそうなってるそうなので、同じようにしてみたかったです。ついでにトレールハンドルも止めちゃいたい。別にトレールツアラーが欲しくて買ったわけではなかったので。
第一、FRとも16インチなので、トレールツアラーには見えませんよね。


後は、リアの車高を思い切って下げてみたらどうなったかなぁと思います。タイヤとシート下面の空間が多すぎ、フルにストロークに使っているとは思えませんでしたので。立ちごけ対策は勿論ですが、多少はキャスターも寝るので直進性が上がり、落ち着いたかも。 ローシートは恰好悪いし、せっかくの乗り心地を悪化させるので嫌です。